今回は「令和3(行ケ)10152」について検討・・・いえ、軽くコメントします。
判決言渡日は2023/9/20です。無効審判の不成立審決を取り消す請求に対し、理由があるとして審決が取り消されたものです。(特許庁はサポート要件充足と判断、裁判所はサポート要件充足しないと判断)
「軽くコメント」というのは、本ブログでは裁判例を取り上げる場合、争点となる技術内容を極力判り易く説明した上で、争点と自己の考察を記載する方針ですが、時々元気がなくなるときがあります。理由はほぼ一貫しており、「明細書が読みにくい場合」です(苦笑)。
明細書が読みにくいというのは、技術内容が難解(自分にとって不得手な技術分野)であるが故に読みにくい場合と、技術内容はそれほど複雑ではないのだけれど単に明細書が読みにくい場合とがあり、本件は後者のケースです。こんなことを書くとその明細書を書いた先生に大変失礼かもしれませんが、明細書が読みにくいというのは、誰が読んでも読みにくいという場合(書き手側の問題)と、個人の問題(読み手側の問題)の場合があり、本件は後者なのかもしれませんが。
ですのでざっと判決文を読んで、ポイントだけ軽くコメントします。
樹脂成形方法に関する発明で、解決しようとする課題が「生産性及び作業性に優れており、安価に作業ができる」というものであり、それに対する解決手段が、実施例では「搬送トレイ」というものを不可欠の構成としているのに対し、クレームには「搬送トレイ」が含まれていません。判決は、本件発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていない発明を含むから、特許法36条6項1号の要件を満たさないサポート要件違反であり、審決はこのことを検討して判断したものといえない、として審決を取り消しました。
結論だけを読むと「ありがちなやつね」という感じですが、無効審判での特許権者側の主張を読んでいませんが課題解決手段がクレームに盛り込まれていないにも関わらずうまいこと主張して無効審判を不成立に持っていった、ということであれば、それはちょっと興味があるところです。
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※注)上記裁判例に関する本ブログの記載はあくまで個人的な見方となりますこと、ご了承ください。