進歩性に悩める弁理士のブログ

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【裁判例】 令和3(行ケ)10070 引用発明の技術認定誤り

今回は「令和3(行ケ)10070」について検討します。判決言渡日は2022/06/28です。無効審判での特許維持審決に対しての取消請求事件であり、審決が取り消され、結果的に特許が無効になったものです。
尚、本件は個人的に詳しく掘り下げる元気があまり出ませんでしたので簡潔に切り上げます(苦笑)。理由は、どうにも特許庁の判断が特許庁らしくないというか、どういう訳かずいぶんと引用発明を狭く解釈しており、私の頭の中が「?」マークで満たされてしまった為です。

【本件発明(特許6662767)の概要】
マッサージ装置に関するものであり、従来はマッサージプログラムは変更できないものであったことに鑑み、本件発明はサーバ103から端末装置104にマッサージプログラムをダウンロードし、端末装置104からマッサージプログラムがマッサージ装置106に転送される様にしたものです。
マッサージ装置106は、マッサージ部(※1)を駆動する駆動部(※1)と、駆動部と接続されるマイクロコントローラ(※1)とを備えています。 
※1)下図では不図示。
マッサージプログラムが転送される際、マッサージプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツもあわせて転送され、当該アイコンがマイクロコントローラからリモコン150に送られます。


 

【要点】
引例の詳細は割愛しますが、複数の家電機器を一括して制御するように、複数の家電機器に対して制御端末から制御命令を出す構成が開示されています。また、「リモコン端末に表示されたアイコンによってプログラムを選択するシステムにおいて、制御装置がプログラムコードを受信する際に、当該プログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツを合わせて受信して、当該アイコンを制御装置からリモコン端末に送るようにする」ことは周知技術であると裁判所は認定しており、実際に引例の内容から読み取れます。。
特許庁は、制御端末から複数の家電機器に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものであるから、本件発明1の「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」に相当するものではないと引用発明を限定的に解釈しました。しかし裁判所は、引例に記載された技術事項からその様に限定的に解釈すべき根拠はないとし、引用発明の技術の認定には誤りがある、としました。
小生はざっと判決文を読みましたが、全体的になんだかよく判りません(苦笑)。いずれにせよ特許庁がずいぶんと引用発明を狭く解釈していることは確かであり、例えば特許審査の際の審査官のスタンスとは真逆であって、ちょっと無理のある審決だなぁということだけは判りました。
(ごめんなさい、自分でも恐らくあとから本件を読み返してもあまり役に立たないような気がします。すっと読み飛ばして頂ければ幸いです。)


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