進歩性に悩める弁理士のブログ

主に自己の業務の備忘録として思うまま書いていきます ※業務以外の雑談も

H3ロケット 失敗かそうでないか

 表題のことで世間の一部が賑わっているようです。共同通信の記者がJAXA担当者に「失敗ではないのか」と問い、これに対しJAXA担当者は「設計の範囲の中で停止したもので失敗とは捉えていない」との主旨の回答をし、共同通信の記者が「それは一般に失敗といいます。ありがとうございます。」と捨て台詞のような言葉を残して質問を終えた、というもの。
 「失敗」とは、広辞苑によれば「やってみたが、うまくいかないこと」。
 仮に「2/17に予定通りの打ち上げが成功したか?」という命題であれば、「失敗」ということになるのでしょう。
 ですがそうきちんとした定義が共有されていない状態で、「失敗」の定義が個々人の頭の中にある状態であぁだこうだと言いあっている状況なので、話が噛み合わないのは当然でしょう。
 尚、私のような全くの門外漢の一般人が抱く「ロケット打ち上げ失敗」と漠然と言う場合のイメージですが、(あくまで私の場合ですが)機体が大きく損傷してそのプロジェクトがもう完全に一からやり直しか、或いは消滅してしまうイメージです。
 今回の場合、現段階では機体の損傷はなく燃料を一旦抜き取り、不具合の確認をして3/10までに再打ち上げを目指す、ということですから「ロケット打ち上げ失敗」という言葉のイメージには合いません。
 まぁ、かといってJAXAの言う「中止」という言葉のイメージともちょっと違う感じもあり、やはり「2/17当日の打ち上げは失敗したがプロジェクトは継続中」と表現するのが正しいような気がします。
 いずれにせよ、会見のあの場でああいう言葉が記者の口から出るというのは、見ていて「なんだかなぁ」という気分にさせられます。上記の記者は「(失敗の定義について)もやもやするので」と切り出したようですが、聞いている側がもやもやしちゃいます。

 言葉というは本当に難しいものです。我々明細書執筆者は日常それを思い知らされている筈でが、それでも疑義の生じない言葉使いというのはなかなか徹底できず、ときに自分本位になってしまいます。
 そういうことが無い様にと、改めて思い知らされる事案です。