進歩性に悩める弁理士のブログ

主に自己の業務の備忘録として思うまま書いていきます ※業務以外の雑談も

2013年頃までの裁判所の進歩性判断

先日投稿した「弁理士会のel研修(進歩性)」の「7.知財高裁の進歩性判断基準の激動期が過ぎたのか、揺り戻しはあるのか-記載要件などの考え方における特許庁知財高裁との乖離問題を含めて(2013.11.15収録)」を聴講しました。元知財高裁判事の塚原先生の講義です。
私はこれ、開催時に生で直接聴講したんですが、案の定かなり忘れてしまっていました。
自分が確認したかった内容の要点は以下の様な感じです。

  • 2002年ころは「同一技術分野論」が主流であり、同一技術分野であれば(示唆・動機付けなどがなくとも)組み合わせが容易に肯定される傾向があった。
  • それ以前は、示唆・動機付けなどの具体的な説示が必要とされており、進歩性は否定され難かった。
  • 「裁判所の進歩性判断が厳しすぎる」との批判を受け、2004年秋以降、進歩性判断の見直しの動きが生じた。
  • 裁判所の進歩性判断の「修正第1弾の狼煙役」がH18(2006年)6.29の「紙葉類識別装置判決」であった。
  • 2008年~2011年、知財高裁の進歩性判断が激変(示唆、動機を要求)。
     ※例えば、周知技術であってもそれを適用するには「示唆等」が必要。
     ※但し査定系に関するものであり、当事者系は査定系よりも進歩性判断が厳しい。
  • 結論として、同一技術分野論は終焉。

非常にざっくりですがこんな感じです。
尚、収録が2013年11月なのでそれ以降の動向は判りません。またそもそも裁判所の判断動向なので、我々実務者が普段もっとも直接関係のある特許庁審査官の判断動向ではありません。勿論、裁判の判断動向は当然審判や審査にもフィードバックされる筈と思いますが・・・
このあたりは他のel研修等を見ていくなかで掴んでいきたいと思います。
最後に余談ですが、「紙葉類識別装置判決」は大変有名な判決ですが、この判決での進歩性判断(進歩性あり)は、普段実務をやっている私の感覚からはだいぶずれており、残念ながらこの判決があるからといって進歩性があるかどうか微妙な案件をチャレンジしてみようという気にはならないです。