進歩性に悩める弁理士のブログ

主に自己の業務の備忘録として思うまま書いていきます ※業務以外の雑談も

最近の困りごと

久しぶりに実務のお話です。
特許庁は質の高い特許審査、審査官の判断の均質性向上、などを目的として、ユーザー評価調査を毎年度実施しています。その結果は毎年公表されていますが、進歩性の判断の均質性に関しては「満足」、「比較的満足」、「普通」のトータルで全体の8割強というところで推移しており、極端に悪くはありません。「比較的不満」、「不満」は合わせて全体の2割弱です。
自分はというと、勿論(苦笑)、後者です。以下は、最近の例です。

【例1】1回目の拒絶理由通知で許可クレームがあり、それに限定して補正したら、審査官が変わって新たにサーチされ改めて拒絶理由通知が来た。
・・・まぁ妥当な引例だったので審査内容自体に文句は言えないのですが、どう考えても審査官が変わったことがトリガーです。そのこと自体も止むを得ないのですが、結局一番損をするのはお客様です。(フィーが発生します。最初から妥当な引例に基づいて審査されていれば、発生しなかったものです。)

【例2】実施例共通のファミリー出願A、Bがあり、出願Aの審査結果が最初に出て、従属クレームの一つが許可されていたので、その内容で補正した。その後、出願Bの審査結果が来て(審査官は出願Aとは別)、出願Bには出願Aで許可されたクレームが含まれていたが、ドンピシャの引例があって拒絶されていた。
・・・まだ出願Aの最終結果は出ていませんが、典型的な審査の不均質の例ですね。特許庁側はファミリー出願があることを簡単に把握できる筈なので、情報を共有しつつ審査をして頂きたいものです。

 

以上が最近の一例ですが、他にも、どうしても拒絶したいのかずいぶんと離れた技術分野から引例を強引に引っ張ってきて拒絶するなど、ちょっと首を傾げることが最近多いです。
実務ではこういったことはしばしばどうしても起きてしまいますので、申し訳ないと思いつつお客様にはご了承いただくほかないというところです。

青春18きっぷの改悪?

約1か月、コロナの後遺症に苦しんだあすみ総合特許事務所の鈴木です。おかげさまで完全に回復しました。
さて本日も雑談です。ここ数日、ネットで青春18きっぷの改悪(と言う人が多い)の記事をよく見かけるのでちょっとこれに関して書いてみたくなりました。
この切符は若い人のみならず結構年配の人が利用しているようで、今でもなかなか人気があるようです。
といっても、一部の趣味を有している人を除き多くの人には興味のない(関係のない)話かもしれません。社会人になってしまえば、時間を金で買わざるを得ない人が殆どでしょう。かくいう自分も、記憶が正しければ高校時代(約40年前)には相当お世話になりましたが、社会人になってからは勿論のこと、大学時代でさえ使った記憶がありません。

(↑ちょっと懐かしくなってタンスの奥から掘り起こして撮影しました。)
この切符は、私が高校時代利用していたときは5枚綴りで1万円、1枚あたり2千円で、ばらして利用できるものでした。使い方は1人で5枚を好きに使うもよし、複数人で分けてつかうもよしでした。
調べたところその仕組みは1995年までで、以降は切符が1枚のみで、その1枚に日付を5箇所記入する仕組みに変わりました。そのことを噂で聞いたときは、ずいぶん使い勝手が悪くなったものだと思いました。
それが更に、今年の冬から大きく変わり、1人が連続した5日間または3日間使用する形態に限られるとのこと。(これまでの5日間用に加え、3日間用が新たに発売される)
これにより、ネットでは大きな落胆の意見が溢れています。
JR東日本の広報によると今回のリニューアルの主な理由は、「自動改札に対応する為」だとか。
ユーザー目線では、必ず有人改札を通らなければならないので入る際や出る際に時間が掛かる場合があり(有人改札に人が並んでいる場合など)、自動改札を通れるようにして欲しいとの声があったようです。
JR目線では、駅員や車掌の負担が増えるため、自動改札への対応の要請は恐らく内部でも相当前から挙がっていたのでしょう。
とはいえ、です。「その結果がこれですか?」とユーザーが感じるのは至極当然でしょう。
社会人なら普通に運賃を払え、などという短絡的な意見もあるようですが、それはちょっと短絡的すぎるでしょう。
或るサイトによれば、青春18きっぷの売り上げはなかなかのもので、経費を踏まえてもJR側にとっては大きな利益を生むものであるようです。
にもかかわらず、ユーザーからの批判、ひいてはユーザー離れを招くのが明らかであろうリニューアルをJRが何故行うのか?
理由は想像の域を超えませんが、社会の変化(働き手不足と、それに対応するための徹底した合理化)という大きな波にのまれた、というところではないでしょうか。(全くの勝手な想像です)
経費を差し引いて考えても利益を生むとはいっても、有人改札の利用が前提となると、人手が足りない状況で販売しても種々の弊害を生むだけです。
ただし・・・です。これはもう本当に感情論になってしまいますが、この切符はお金のない若者(特に学生)にとって自分の人生でかけがえのない思い出を作ることができる夢の切符、と言ってもよいように思います。(自分がそうでした)
もう少し他の方法がなかったのか、そこは大いに気になるところです。
多少値上げしても良いので昔のように5枚綴りとし、但し紙ではなく自動改札を利用可能な磁気乗車券にする、とか。勿論、ハードルは幾つもあるでしょうが、一人のみ5日間連続という使用制限をつけることなく自動改札を利用して貰うことは、現在の技術なら可能だったのではないかと思ってしまいます。
或いはそれが無理なら、せめて通学定期券(学割)を購入する際の仕組みを使って学生さんだけにこれまで通りの18きっぷを販売し、大人向けには名称を変えて今回のリニューアル内容で販売したらどうか、などと考えたりもします。学生さんは18きっぷの利用に際して学生証の提示を求める場合がある、などと制限をつけておけば、大人向けのネット転売は或る程度防げるでしょう。

ありとあらゆるものが合理化される昨今です。自分が若かった頃はあらゆるものが緩く、「あの頃は良い時代だった」と振り返ったりもできますが、今の若い人たちが歳をとって今の時代を振り返ると、果たしてどう思うのか。なかなか切ないですね。

オミクロン侮れません

今月に入り、人生初コロナに罹患しました。9/3(月)夜に急な発熱、計ったら38℃。「まさか」と思い、(訳があって)家に大量にストックされていた抗原検査キットで検査してみたら見事に陽性。
病院での抗ウィルス薬は既に自治体の補助が終わっており、処方してもらうと1万5千円だの3万円だのと、とんでもない値段。しかも飲んでも効果は飲まない場合に比べて症状が1日程度早く収まるという程度のもの。ネットで調べてみても、いまではもはや大半の人が解熱剤等の対処療法で軽快しているようで、病院でも抗ウィルス薬の積極的な処方はしていないとのこと。
オミクロン株はデルタ株より症状は軽いようだし、今では5類移行だし・・・ということで自分も病院にはかからず、市販の風邪薬等で対処しよう、との方針に決めました。

(発症直後は1日おき、発症後5日以降は毎日抗原検査を行ったところ、発症後6日目で陰性は確認できました。)

発熱自体は1~2日で収まり、一瞬「なんだこれで終わりか」と思いましたが、そこからが大変でした。というか、現時点でもなお進行中です。
先ず、発症後3日目くらいから咳が出始めました。痰がからむ咳で、幸い寝ている間は症状は出ませんが、朝起きて体が温まってくると酷くなってきて、起きている間はずっと続きます。この咳は、発症後2週間くらいまでが酷く、その後はだいぶ収まりましたが3週間以上経った現在でもなお残っています。しつこいです。
そして最も辛いのが、味覚・嗅覚がやられたこと。これにはもう、本当に心が折れます。人間、食べる楽しみを奪われると、日々の楽しみのかなりを奪われてしまいます。発症直後は特になんともなかったのですが、熱が収まるのと引き換えに、味覚・嗅覚がやられました。味覚・嗅覚の正常時を「100」とすると、発症後4~5日目で「10」くらいまで低下しました。ノンアルコールビールを飲んでも、全く風味を感じません。コーヒーも水のよう。食事も、例えばチキンのてりやきを食べても、味のしないガムを噛んでいるようです。その後発症後2週間かけて、少しずつ「10」から「60」くらいまで戻り、発症後3週間で「70~80」まで戻ってきましたが、3週間以上経った現在でもなおその状態で、完全に元には戻っていません。「ふわっ」と香るような微妙な匂いがせず、例えば家の玄関から外に出ても全く空気の匂いはしないし、逆に外から帰ってきて家に入っても特有の匂いがしません。コーヒーの味も変なままです。
「オミクロン」「5類移行」・・・このワードで軽く見てしまっていましたが、全く侮れません。またこういった後遺症で、メンタル面でやられることも今回わかりました。
高価で、症状が1日程度早く収まるだけという抗ウィルス薬ですが、上記のような後遺症が軽くなるのであれば、間違いなく処方してもらっていました。実際どうなのかは判りませんが、抗ウィルス薬が後遺症に効果があるという情報もネットで見かけるので(発症後速やかに服用していれば、ですが)、次に感染したら絶対に抗ウィルス薬を処方して貰おうと思っています。
早く、美味しいビール、美味しいコーヒーが飲みたいです。(トホホ・・・)

甲子園決勝戦での延長タイブレークについて

高校野球ロスに陥っております、あすみ総合特許事務所の代表弁理士・鈴木です(苦笑)。
恐らく今年最後の高校野球ネタです。
甲子園での熱い戦いが終わりました。開会式をみたとき、今年は一体どんな熱戦が繰り広げられるのだろう?もしかしたらそれほど波乱もなく熱い戦いもなく淡白にすっと終わったりして・・・?などと思いもしましたが、やはりそこは高校野球。そんなはずがある訳ありません。
個人的に脳裏に一番焼き付いたのはやはり準決勝・神村学園vs関東一での、関東一・センター飛田君の神バックホームです。こんなことがあるのか!と本当に興奮しました。二番目には、やはり自分が千葉県民ということもありますが、神村学園vs木更津総合での、木更津総合・レフト山口君の超ファインプレー。プロ注目の神村学園・正林君の放った大飛球を超ダイビングキャッチ。ピッチャーの千葉君が大喜びして手を叩いていたのも印象的でした。
そして決勝戦の関東一vs京都国際も大熱戦で、延長タイブレークに突入し、結果的には京都国際が勝ちました。決勝での延長タイブレークは初めてとのこと。
この試合、生で観戦することはできず、あとから録画で見たのですが、延長タイブレークに突入したときに感じたのは「あぁ、タイブレークなしの延長戦で見てみたかったなぁ。そうしたら一体どっちがどうやって得点圏にランナーをすすめて、どう得点したんだろうか?」・・・でした。
そうしたらやはり、決勝戦での延長タイブレークに関しては賛否両論が出ている様子。本日のTBS・サンデーモーニングでも野球解説者の二人が同意見のようでした。
そんな意見がでるほどに、両校の9回裏までの戦いは見事で、息詰まるものでした。
まぁ、延長タイブレークの導入趣旨(投球数の抑制)に鑑みて、「最後くらいは」という理由で決勝戦の延長タイブレークが見直される可能性はほぼゼロでしょうけどね。
それと球児たちは延長タイブレークの練習を相当やりこんでいる筈。人というのは練習したことを実戦で試したくなる生き物なので、球児たちは延長タイブレークに突入したとき、「日頃の練習の成果をみせてやるぜ!!」と気合が入ったのではないでしょうか。なので、当の球児たちは、決勝戦での延長タイブレークに異論は殆どないのでは?と思ったりします。(→全くの勝手な想像なので、あしからず。)
とはいえ、決勝戦でここまで実力が拮抗して素晴らしい戦いを繰り広げ、9回裏終了時点で点差がつかない2校を、どちらが勝ちか決めなくてはならないというのは、本当になんともツライというか、理不尽さのようなものを感じます。もう、両校優勝でいいのでは?とも思ったりしますが、でもそっちのほうが当の球児たちはきっと納得いかないでしょう。
ところで野球の延長タイブレークは、サッカーのPK戦に少し似ていると感じています。サッカーのほうが、究極に点数が入るシチュエーションではありますが。
2022年のサッカーW杯・決勝戦(アルゼンチンvsフランス)では、前半・後半で決着つかず、延長戦でも決着つかず、PK戦で勝敗が決しました。
だからという訳ではないですが、高校野球も少なくとも決勝戦での延長タイブレークは、いきなり始めるのではなく、3回程度タイブレークなしの延長戦とし、13回くらいからタイブレークにしたらどうかなと、単なる一高校野球ファンの自分は思います。
これは、千葉県大会での決勝戦でも同じように思いました。千葉県大会の決勝戦木更津総合vs市立船橋)も、息詰まる投手戦の結果1-1で延長タイブレークに突入し、好投していた市立船橋の投手エラーによりサヨナラ終了という、観客視点ではちょっと色々考えてしまう終わり方でした。
いずれにせよ、今年も本当に素晴らしいものを見させてもらいました。

生で見る野球応援に圧倒された

自分は高校野球ファン且つにわか阪神ファンにもかかわらず、実際に球場で試合を観戦したのはおよそ40年前を最後に一度もないという、本当に野球ファンなのか?というていたらくです(苦笑)。高校生のとき、全校応援ということで右も左もわからず駆り出され、観戦・応戦したのが最後でした。でも案外、私のような人は結構多いのではないでしょうか。
これまで何度か観戦しに行ってみようと思いつつ、テレビでみたほうが球種もわかるしその他諸々解説つきで判り易いし・・・というのが私のこれまでの屁理屈です。
ですが先日、約40年ぶりに生で観戦しました。高校野球千葉県大会のまだ3回戦ですが、自分の子供が現在高校の吹奏楽部で、野球応援に駆り出されているので、休日ということもあり応援がてら見に行ってみようと思い立ちました。でも本音を言えば、球場が県営野球場など施設の充実度が低いところだったら行かなかったかもしれませんが(苦笑)、今回はZOZOマリンスタジアムということで、そのことに背中を強く押された感じです。

(3回戦ということもあり外野席は写真の通り殆ど人はいませんが、休日ということもあってか内野席は結構人が入っていました。)
しみじみ思ったのは、生で見る両校の応援は、テレビで見るよりもの凄い迫力だということ。球場に入った途端、圧倒されました。なかなかに感動ものでした。
応援人数がそこまで多くない状況でこうですから、春・夏甲子園の迫力は相当なものでしょう。
今後、生での野球観戦にハマってしまいそうです(笑)。
チケットをとるのが難しいでしょうが、今年は是非一度、夏の甲子園に観戦に行きたいと思っています。

【裁判例】 令和6(行ケ)10002 容易想到性の判断の誤り

 だいぶ久しぶりの裁判例の検討となります。今回は「令和6(行ケ)10002」です。判決言渡日は2024/5/23。無効審判の不成立審決を取り消す請求に対し、理由があるとして審決が取り消されたものです。
特許庁は進歩性ありと判断、裁判所は進歩性なしと判断)
 尚、久しぶりの検討ですが、以前にも同様なことを書いた記事がありましたが今回もあまり教訓になることはないかもしれません(苦笑)。本件発明と引用発明とを対比すると、本件発明の進歩性はないだろうと第一印象で感じる様な内容で、実際その通りとなっています。本件発明の進歩性を否定した裁判所の判断が、普段の実務での特許庁審査官の判断に近い感じです。審判官の判断は、「それはちょっと苦しいのでは?」という印象を受けます。

【本件発明(特許6889970)の概要】
 請求項1-7まであり、無効審判で請求項2、6を除いて無効と判断され、請求項2、6は特許性ありと判断されました。請求項2は物の発明、請求項6は製造方法の発明で、要旨としては同じなので請求項2に係る発明を「本件発明2」として以下説明します。
 本件発明2は、土木工事用の不織布に関する発明で、波によって堤防の法面が削り取られること(「洗堀」というらしいです)を防ぐために張られるシートです。「洗堀 シート張り」でネットを検索して写真やイラストを見るのが最も手っ取り早く理解できるでしょう。下図は、図1です。
 白色繊維と着色繊維との混合物からなり、着色繊維はカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈し、不織布本体が鼠色の色彩を有し、且つ斑模様を形成し、着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲にあることを特徴とします。 

 明細書には、発明の効果(目的)として幾つか記載されていますが、おおまかには、不織布表面が斑模様を呈することから、特定した複数の斑点間の距離を伸長前と伸長後に実測することで、不織布の伸び率を正確に把握することができ、不織布の伸びを適正に管理しながら敷設することができる、というものです。
 但し着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲にあることによってどの様な作用効果が奏されるかの記載はありません。
 尚、着色繊維の混合量に関して以下の記載はあります。
「実用上は20ないし80%の範囲が望ましく、機能的には50%の混合量が最もよい。着色繊維の混合量が20%より小さいと、不織布の全体色が薄くなって斑が形成され難くなり、さらに光が反射しやすく、さらに耐候性に問題が生じる。着色繊維の混合量が50%を超えると、不織布の全体色が濃くなって肉眼で斑を識別することが難しくなる。」


【引用発明】

 特許文献ではなく実在する製品が引用発明です。「株式会社田中」の「ニードキーパー NK-800Z」という製品(以下「800Z製品」)で、ネットで検索すると出てきます。
 800Z製品が本件発明2と相違する点は、800Z製品の着色繊維の混合量が重量比で仕様上5%であり、実測値が7.5%であることです。
 言ってしまえば、ただそれだけです。なので本件発明2は「一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化」という、設計変更の典型例のようなものと言えるかもしれません。
 ですが審判では以下の様に判断されました。

【審判での判断】
 審判では、以下の様に判断されました。
・800Z製品は、一定の品質を保って製造されるものであるところ、白色繊維と黒色繊維の比率を変えるような設計変更をすることは、通常行わない
・製品仕様の5%を中心に大小の値が測定されることが技術常識であるところ、800Z製品において、黒色繊維の混率を7.5%から更に高める動機はないし、製品仕様の5%を、桁の異なる10%以上とすることには阻害要因があるといえる。

・・・なかなか苦しい主張に見受けます。

【裁判所の判断】
 裁判所は、以下の様に認定しました。
・本件発明2において黒色繊維の混合比率を10ないし90%の範囲としたことに特段の技術的意義があるとは認められない。
・カーボンブラックが、耐候性、耐摩耗性及び遮光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、景観を損なうことの防止等を目的として、所望の効果が発揮できる量で土木工事用不織布を含む土木工事用シートに添加されているものであること、及び、土木工事用の防砂シート(不織布又は織布)として用いられる製品の色の濃さが一様でなく、白色の製品、灰色の斑模様の製品とともに濃灰色ないし黒色の製品も使用されていることが、本件出願日の時点における技術常識であったと認められる。
・(カーボンブラックの上記目的を前提として)黒色繊維の比率を増減することは、当業者の設計事項にすぎないというべきである。また、黒色繊維の比率を7.5%より高める動機付けがあったということができる。
・800Z製品の仕様として黒色繊維の比率が特定の値に定められているからといって、この値を変更することに阻害要因があると認められることにはならず、800Z製品の使用における黒色繊維の比率が1桁である5%とされていることから、この比率を2桁の10%にすることに阻害要因があると解することもできない

【考察】
 着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲にあることによって異質且つ顕著な作用効果がない以上、設計事項と判断されることは至極自然な流れに見受けます。審判官は、800Z製品の仕様値が5%であることを踏まえ、一定の品質を保って製造されるものだから比率を変えるような設計変更をすることは通常行わないとか、桁の異なる10%以上とすることには阻害要因があると主張して本件発明2の進歩性を肯定していますが、これが通るのであればむしろ普段の権利化実務に使えますね(苦笑)。
 本件明細書では、「着色繊維の混合量が20%より小さいと、不織布の全体色が薄くなって斑が形成され難くなり、さらに光が反射しやすく、さらに耐候性に問題が生じる。着色繊維の混合量が50%を超えると、不織布の全体色が濃くなって肉眼で斑を識別することが難しくなる。」と記載しているので、着色繊維の混合量を重量比で20~50%の範囲に設定していれば、少し状況は変わったかもしれません。
(但し異なる型番の「NK-500S」は黒色繊維の混合率が23.9%だそうで、これが証拠の一つとして挙げられていることから、結果的に権利化は難しいと想像されますが。)
 ただ、ざっくりでも良いので数値範囲のパターンをできるだけ多く、且つ各パターンの特有の技術的意義を(何とか捻りだして)記載しておけば、あとあと権利化の際に役立つことがあるということは改めて認識できました。


【詳細情報】
知財高裁 裁判例検索結果へのリンク


※注)上記裁判例に関する本ブログの記載はあくまで個人的な見方となりますこと、ご了承ください。


 
 

充実したGWでした

今年はカレンダー通りのGWでした。ここ数年は休暇をプラスして登山に行ってましたが、今年はGW前、GW期間中と仕事で精神的にキツイことが続き、遠出という気分になれませんでした。ですが近場でリフレッシュでき、振り返ってみればそれなりに充実したGWでした。うち1日は、久しぶりにバイクで房総半島を走ってきました。

上の写真は房総フラワーラインの途中、見物海岸という場所で撮ったもの。房総というと上の写真のように海のイメージですが、個人的にはバイクで走る場合「山」のイメージです。房総は「山」がいいんです! おススメです!! 勿論、房総には高い山はありませんが、低山を縫う様に走る県道・国道がとても良いのです(「のんびり走りたい派」にとってですが(苦笑))。道幅がそれなりに広く、アップダウンが急すぎず、信号が少なく、そして交通量も少なく、バイクで走るには最高です。 以前の記事(久しぶりの息抜き - 進歩性に悩める弁理士のブログ (hateblo.jp))で県道88号が良かったと書きましたが、今回は県道89号、国道410号、安房グリーンラインが良かったです。房総の下のほうに行くには勿論館山道で南下するのが速いですが、国道410号を使ってのんびり南下するのもおすすめです。下の写真は、県道89号です。

前回良いと思った県道88号も、今回も走りました。県道88号の途中、「道の駅三芳村鄙の里(ひなのさと)」という道の駅があるのですが(写真は撮り忘れました)、非常に綺麗で、足湯があり、また私の大好きなアイスコーヒーが滅茶苦茶旨い! こちらもおススメです。

明日からまた頑張ります。